4.文化財保護と文化育成 06.3

  文化財保護も含めて文化育成について、単に古いもの
を残すといった視点だけが特に目立つが、技術偏重ぎみの
世の中だからこそ文化育成の視点が重要であるとして、生
活に文化をもっと取り込むことを主張したくなった。

  最近、ものについて「もったいない」という言葉が定着しつ
つある。しかしながら、依然として大量消費のムードが減速
せず、リサイクル、リユース、リデユースといっても「もの」そ
のものの寿命があいもかわらず短く、こうしたことが文化の
育成に大きな阻害要因にもなりかねないのではないかと危
惧している。文化育成はその意味で高度文明社会の対極
にあるともいえるので、文化の育成と保護という根源的な問
題は、高度文明社会になればなるほど時代的な解決を必要
としている。これには種々の立場の方々が事あるごとに種々
の意見を発して対応していくべきであると考えている。こうし
た観点で少し私事を記す。

 私は建築についてここ数十年教鞭をとってきており、若い
人に生活空間の設計を教えているが、そこにおいて「人を愛
し」「ものを大事に」といった姿勢が根幹であると力説している。
しかしながら、若者にとっては文化についての感覚が多少疎く、
例えば縄文式建築を見て何になるといったことを親とともに
主張され方もおられ、その都度、文化の意味と育成について
語り、「我らは文化の育成の延長線上で今日的に生産活動を
営んでいる」と強調している次第である。こう考えると、文化育
成は市民や子供ともども携わるべしとして、様々なところで様
々なときに文化育成を細々とではあるが声高にせずにはおら
れない。

   文化育成については、これまでの文化財を如何に保護し
ていくかという大事な問題に加えて如何に文化財に親しんで
いけるか(文化財を如何に生活に活用していけるか)という問
題がある。最近、街づくりや住まいづくりの市民参加活動が盛
んになりはじめているだけに、市民や子供の文化愛好(文化
理解)の感覚が育てるという視点で保護の具体的な方策が検
討されていけばと願っている。

   私は文化財保護の専門家ではないが、教育を通して文化
財に寄せる心意気を若い方や市民に伝えていければ、あるい
はその逆を伝えていけば十分と思っている。文化財保護に際
してのいくつかの思いを以下に列挙する。

 (1)我らの生活空間にどう文化を根付かせるか、特に若い 人
  のために
   →施設設備の話になる。

(2)文化財をどう教育現場に持ち込んで愛好家
  (いや理解 者)を育てていくか。
   →初等中等教育で文化財教育ということである。

(3)文化を親しむことができるようなことは何か。
    →市民教育、あるいは啓発活動ということである。

  私は、若い方に教育の視点を通して文化の気質を浸透させ、
文化財を大事にしていくように働きかけたい。また逆に、若い方
の心意気をぜひとも文化財保護に反映できるようにつながれ
ばいいと思っている。我らの生活空間はいうにおよばず富山県
全体が文化の空間となり、文化の香りのなかで健全に社会生活
を営みたいものである。

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