11.公共事業について  07.05.29

 21世紀における公共事業とは。  
   
   公共事業というと無駄使い事業というのが一般的にとら
えられがちであるなかで、行政サイドは「魅力ある公共事業
とは」を考え始めている。私は、もっと市民の声を取り入れる
べしと主張したく筆をとる。

  公共事業というと、空気と同じように有難味が平生より認
識されない有用なものはもちろんあるにもかかわらず、我ら
が思うにはすぐに、無駄な工事そのもの、年度末には帳尻
あわせに行なわれる工事、一部の業者を儲けさせるもの、
とにかく道路工事そのもの、といった捉え方が多く、なぜそ
の工事が必要であり、 かつ公共なのかといったことは、一般
にはあまり認識されていないといったほうが実状である。

  では、なぜこのようにあまりにも支持されない事業がまか
りとおるのか、やはり必要・不必要をも含めた議論が一般に
は十分にいきわたっていないといえる。また、一方では(一部
の)干拓事業やダムなどのように、作ることを前提とした工事
がいいのかどうか、もっといえば今日的に工事の根源的目的
が変わってきているのにもかかわらず、前近代的に工事の
遂行のみが目的化していることに、市民は大きな疑問をいだ
いていることも事実である。こうしたことから公共事業の必要
性云々がいわれるようになったのも、時代のニーズとして喜ば
しいことである。

 しかしながら、世の中にそうした議論があっても、それで市
民感情を満足させ、市民の支持を得たということではなく、
市民に対してもっと踏み込んだ何かがあってもいいように思
える。具体的に言えば、行政側では市民への説明は当然の
ことであるが、そのまえに何よりも事業の必要性や価値につ
いて市民とともに議論して適正運用が求められ、また作る一
方のやり方のみならず育て守るやり方も考えるべきである。
もちろん、市民側にも今日的な社会性を市民自ら熟成してい
くべきである。

   私は、結局のところ「公共事業は何か目新しい事業を模
索するのではなく、たとえどんな小さなことでも、市民が実感
できるようにすべきことこそ今一番求められている」と思って
いる。この観点で以下のことを実践することこそが、21世紀
の事業と考えている。

 (1)市民との連携
 (1.1) 事業の必要性と価値を市民側からもわかるように話し
合いのスペースを設ける: 事業の必要性などについて市民
の関心事として話しあう場が必要である。すなわち、行政関
連部局に市民との交流スペースを設け、いろんな事業のコ
ンセプトを常にオープンにして、また市民からのコメント記入
などのやりとりできる場とする。もちろんパブリックコメント募
集といったことも行う。

(1.2) 市民が事業選定にもかかわる。(極論かもしれないが):
裁判制度と同じ論調で市民が裁定に立ち入っていってもいい
のではなかろうか。考えてみれば首長を選ぶのも市民なら、
行政の種々の決定にも市民なりにかかわってもいいのでは
なかろうか。いってみれば、行政に対する市民からのクロス
チェックを行うものである。ただし、専門家には専門家の役
割があるので、専門家で専門に構成される場にも、市民が
入り込むということではない。

 (1.3) 市民の声をしっかりと反映させる:  事業を種々立案し
て社会状況が変わってきた場合に、再評価を直ぐに実行し
,時には事業中止の選択もするようにすべきである。決まった
ことをどんな場合でも貫徹するという姿勢には、市民不在と
いうことに繋がることが多い。

 (1.4) 適正評価:  公共事業では、事業そのものの価値が
適正に評価されているかが常にポイントとなる。競争入札云
々のまえに、性能とか価値とかがどう設定されるのであろう
か。公共事業は安くしないと納税者が納得しないという話が
あるが市民は本当に良いものにして欲しいのである。意思
の疎通を図るべきである。

 (2).世論形成(教育的役割)
  (2.1) 物の価値についての世論形成:
 ものの価値について、ハード的な面ばかり強調されている
が、ソフトに対する価値が極論すると認められていない。
またハードについても安ければ何でもいいといった経済市場
原理至上主義が入り込み、価値というものがないがしろにさ
れてしまう。それゆえ、社会性に関する価値に関する眼力を
養う地道な教育の実践が求められる。

 (2.2) 公共性や社会性に関する教育:   今日、公共性の必
要性について、やはり公共環境という視点の熟成が必要であ
り、この種の教育をどうすすめていくのか検討を要している。
単に学校教育にある総合学習で社会性に目を向けさせると
いうことではなく、日常教育においてもそうさせるべきである。
また、それは単なる啓発といったものではなく、(自然環境社
会環境を含め)市民各自の周辺のものにもっと関心を持つよ
うに、教育的実践を検討していくべきものである。

(3).公共事業に質的転換を求める。(まとめとして) ものを作
るといった発想もあればものを育て守るといった視点もあり、
特に後者の視点を大事にすべきである。今後、増産に対して
減産、増築に対して減築といったことも多々出てくるはずであ
る。こうしたことで、公共事業という、いうならば街づくり都市
づくり社会作りそのものを、市民自らのものとしていきたいも
のである。  

 21世紀、我が地元である富山県の公共事業が上述の観点で
良い方向にすすむことを期待したいものである。

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