9.これからの美術館について            07.04・24

 美術館・博物館はどこでも入場者数の減少に頭を痛めてお
り、活性化策や将来展望を必死に考えている。そこで私は、
これからは、美術館としてではなく世の中の情操教育の拠点
として積極的に打って出るべしと主張したい。

 「技術偏重社会から脱却して感性豊かな社会をめざす」と
いうスローガンで世に出て久しいが、実際には教育ひとつとっ
ても、初等中等教育では図画工作、美術、音楽の授業時間
は減る一方であり、中教審では中学校の美術や音楽は選択
科目にするといった方向が検討されているとも聞く。

 このような状況において、果たして子供の感性が果たして
育んでいけるのであろうか、またそうした動きに対して市民の
感性が鈍感になっていくのではないだろうか。今まさに、世の
中の感性が問われているといえよう。

   私は、世の中の改革を大上段に構えているのではなく、そ
うした時代だからこそ、全国津々浦々、人間らしさを育むよう
に、まずは美術から動きをスタートさせてみてはと思っている。

  すなわち、感性の育成として、美術館と学校がタイアップして
、あるいは家庭とのタイアップで、美術愛好家を育てるということ
ではなく(それもありだが)、美術の理解者を増やすということを、
抜本的に考えてみたい。そのためには、美術館が地域の感性
の拠点となるよう、市民の憩いの場であるようにしたい。もちろ
ん、美術の企画展をどのように展開するかといった根本的なこ
ともまた重要ではあるが、これについては他の方にお任せして、
私はいま少し広い意味でのソフトの整備について以下に数点を
主張したい。

(1)美術館に行けばいつでも「美術が開かれている」。誰かがい
て美術の話がいつも聞けるというようにしたいものである。また、
(美術館の庭となっている)芝生広場にも美術品を並べておいて、
 楽しめるようにそれをもって遊べるようにしたいものである。
要は、市民は生活の営みの中で学び、子供は遊びの中で学ぶ。
そこに美術的な感覚が育つように作品とのふれあいを大事に
したいものである。

 (2)家族連れで訪れることができるように、お話スペースを設
ける。学校の授業参観を美術館でやっていただくということも考
えられる。また、町内会とのタイアップで、ご町内への働きかけ
や町内会の来場での教育というか懇談会のような働きかけが
あってもいいと思う。

 (3)ひとつ大事なことを指摘したい。来場者数減少イコール市民
の美術意識の低下といった単路的な見方が横行している。とん
でもないことである。美術館にしょっちゅう足を運ばなくても美術
愛好者や美術理解者の市民は多く、彼らの心に美術の火が灯
っていることもまた評価すべきことである。「おらが街におけるお
らが美術」。こうしたことがしっかりと市民社会に根付いていくよ
うにしたいものである。

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