学園便り 2008.10 **********************

   ものづくりは自由と制約のバランスから!!  富樫豊

  皆さん、入学したての頃は、プ レゼンの練習として線や文字をきれ
いに描くことや色づかいなどをしっかりとやったことでしょう。その
後、少しずつ内容を深めて、練習の域を越えたいわゆる作品の制作へ
とすすんできておりますね。

   実はその作品制作ですが、最初の頃ですと、例えば「こんなニーズ
に応えるようなもの」とか、建築なら「敷地をここに」とか、いろい
ろと制約が与えられております。皆さんが種々のニーズに応えれるよ
うに、また取り組みやすいようにするためです。勉強が進むに従い、
その制約は教師側から与えるのではなく、自分で自ら自然と課すよう
にもなり、「何をしてもいい」という自由の意味を理解していきます。

   皆さんは、(そうですね)夏休みを過ぎる頃からでしょうか、そう考
えるようになってきます。結構物分りがいいなあと思っていると、おもし
ろいことに、逆にもっと自由に制作がしたいと強くいい始めます。
自分が自動車が好きだから自動車にまつわる作品をとか、形や色
や構成をもっと奇抜にしたいとか、等、自己主張をしてきます。もち
ろん、そうすることもまた若者にとっては大変重要なことですが、そ
こで一度に自由にさせるとすごく悩み苦しみます。なぜかといえば、
ものをつくるとき自由につくるのが一番難しいからです。種々の条件
があると、その中で懸命に考えます。

   しかしながら、いつも与えられた条件があると、それ以上のことが
できなくなるのも事実です。ですから、私たちは、皆さんのはやる気持
ちを理解しつつ制約を少しづつ解除しながら、自由さを盛り込んでい
きます。そして最後には、完全に自由に制作をさせています。これが
卒業制作です。

   そうなると「最終的には好き勝手に何でも有りってことか」と思い
がちですが、もうこの頃になると、入学当初のように考えていた「自由
さ」ではなく、その「自由さ」は一皮も二皮も剥けており、今まで私たち
が用意していた制約を自分なりに解釈してつくっております。

   ある著名な建築家もいっておりましたが、「自分は自由に設計をし
ていますが、自分で制約をきめてそれを楽しんでいます」と。こんな
話をすかさず学生にして、「“自由と制約”はバランスさせるもの」、
「制約があってこそ自由が活きてくるもの」、「クリエイトの本質は
そんなもの」と話を続けております。そして、最後には、「人生って
制約だらけじゃない」、「でもそんな制約をたのしまなくては」と教
訓めいた話で締めております。では皆さん、クリエイトを楽しんでく
ださい。 


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