学園便り 2007.5 ***********************

  「勉学にむかう姿勢について---学生とのディスカッションより」
 富樫豊

  皆さんは、新学期に入り教師からはハッパをかけられながら当然自ら勉学
に励んでおられることと思います。そんな時期だからこそ(実は毎年)勉学にむ
かう姿 勢について皆さんから多くの質問を受けます。
  
  まず第一は、「A先生は本をどしどし読め、B先生は本をむやみに読むなとい
うように、先生方によって言っていることが違っている。混乱することはなはだし い
」という質問です。そんな時、私は「精読と乱読の違いであり、両方のスタイルは必
要」といっております。いろいろな本に出会いを求め、そこからいろいろ と吸収して
いただきたいものです。

  続いて第二は、上記と似たような内容で「学校で沢山のことを学べという方が
おられれば、学校で教わっているようではだめという方もおられる。どう対応すれ
 ばいいのでしょう」という質問です。特にパイオニアワークをなされる方が後者の
コメントを若者に発しておられます。今の若者にはなかなか真意が伝わらず誤 解
することもあるので、「学ぶとは一体何なのか」少し考えることにしましょう。

  パイオニアワーク(創作活動)とは何か。これまでの体系に創造的に積み上げ
ていくものといっていいでしよう。そのためにはまず体系に(言ってみれば)よじ のぼ
らなくてはなりません。これは習うということです。学ぶとは真似ることからはじまり、
それが習うこととなり、学ぶことへと変わっていきます。

  では、教 わらないとは何なのか。これは真似ることをはなれて、自分の考えや
個性を出しましょうということに他なりません。でも勘違いしないでいただきたいのは、
個 性や創造性は、普段の学びに基づいているものです。では、「学び始めの際に
なぜややこしいことをコメントする方がおられるのか、混乱する」という学生もお ります。
実は、読書の場合と同様、バランスです。何のために学ぶのか、創造的活動のため
に真似ることと個性・創造性を発揮することを、学び始めの段階を含 めてどんな時
点でもミックスさせていきましょうということです。

  第三には、「我らはなぜ教師から教わるのですか。教師も本を読んで勉強してい
るのなら、自分は手っ取り早く直接本を読むということはどうなのでしょうか」 という質
問です。まずは「なるほどね」といいながら、「実はね、教師は、本の内容を伝えてい
るのではなく、本を道具として、教師の人間性を介して皆さんと 教育コミユニケーショ
ンしているのです。さらにいえば教師の生き様を見せているのです」と。

  ここまでくると学生諸君は結構納得しますが、それでも「いまなぜそんなことを言う
のですか」、すかさず「それは、皆さんが今フレッシュに学んでいるときだ からこそ言い
たかったからです」と、ディスカッションラリーは続きます。

  とにかく、皆さん、春というすがすがしい季節だからこそ、こうした勉学にむかう姿
勢の話がスパイスとなるはずです。そんな季節に、専門を修得し、人間性を 養い、セ
ンスを磨きましょう。皆さんにとっては、乾いた砂に水がしみこむかのように旺盛な探
究心や勉学心がますます光り輝くことでしょう。がんばってくだ さい。




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