学園便り 2006.10 ***********************

  「郷土の良さを見つけ育てましょう」
                  富樫豊

 「皆さん、郷土についてもっと関心を持ちましょう」というのが今回の論旨です。
私は出かけ好きで郷土には何となく関心をもっていたところ、つい最近東京 から
やってきた友人と話をして、改めて郷土の良さをしみじみと感じました。

  その友人とは、海外渡航経験も豊富な芸術家で、今も諸外国を渡り歩く行動人
です。彼が近代的なものよりも何か渋い土着のものを見聞したいというので、総
曲 輪(富山一番の繁華街)でも出かけて買い物とグルメを楽しもうという予定を急
遽変更して、次に示すような郷土自慢のところを案内しました。それは、高岡端 龍
寺(大規模伽藍)、高岡金屋町(古い街並み)、新湊内川(ベニスのような雰囲気)、
新湊曳き山(実際に引かせてもらった)、上市町大岩山日石寺(三重の 塔)、上市
町眼目山立山寺(トガ並木)など名所旧跡は当然のこと、立山と称名滝のパノラマ
展望道などです。このうち高岡の瑞龍寺は全国的に知られています ね。

 友人は帰りしな、「郷土のことをよくそんなに知っていますね、あなたが私の所に
こられてもどこへも案内できません。著名なところは直ぐに思いつくのですが 郷土
となると、うーん思い浮かばない」と言いました。このような話になるとは思わなかっ
ただけに、「そうねー、有名な場所も確かにいいのですが、自分の住 んでいる所に
も渋く光る良いものがあるはずだと思うのです。ただそれを見つけることが難しく、
しかも育てることはしていないのではないでしょうか」と言葉 を返しました。

 この後、「郷土に関心を持つとはどのようなことか」へと議論を続けました。
 自然鑑賞・名所旧跡訪問・文化財鑑賞など観光といえば、直ぐに著名な所へ行き
たがりますが、本当にそのような選択でよいのでしょうか。観光地の過密化、 逆にま
た荒廃の危惧はこの安易さの結果ではないでしょうか。文化財保全とか自然保護と
いうと、とかく、それは特定(観光地)のものだけを対象としがちで す。また、対策も
対症療法的な感が否めません。ものを守り育てるという観点を見失いがちなのはな
ぜでしょう。本来守り育てるべき対象は、むしろ私たちの日 常や周辺のものではない
でしょうか。日常に目を向けて初めて、ものについての愛着が生まれるのではないで
しょうか。
 
 愛着とは、やはり自分や自分の周りから育むものですし、物事の価値や素晴しさ
はその結果見えてくるはずです。その意味で、郷土のよさの発見と育成は欠か せな
いことと思います。さらに付け加えれば、「人にやさしい、環境にやさしい」という「やさ
しさ」は「まず自分から、自分のまわりから」を原点にしなけれ ばならないと思います。
皆さん、いかがでしょう。


<戻る>