学園便り 2006.7.***********************

 「良さの感動はまず自分か ら---個性的で創造的なもの造りのために--  
                                           富樫豊  

  もの造りに励んでおられるデザイン、建築、コンピュータの皆さん。もの造りを
始めるに あたり何を考えますか。「良い」ものをつくるために色々と考えますと答
えることでしょう。ではその良いものとは何でしょう。世の中のニーズをうまく捉え
た り、クライアントの要求を引き出し応えたりするにはどうすべきか、をしっかり
と考えた結果が「良い」ものといえます。でも皆さんにとっては、真っ先に自分 に
とってどんなものが(本当に)良いのかを考えることでしょう。自分が良いと思わ
なかったら他の方にはすすめられませんですからね。個性的なもの造りの原 点
はそのようなところにあるといえます。

  ここで、先輩方の話を少し紹介しながら、「自分が満足する良さ」というものを
垣間見ま しょう。まず第一の例として音楽
芸術から。本校出身ではないのですが、「おわら」の胡弓(楽器)を奏でるヤン
キーのような人がおりました。その人は「胡弓 の良さはやったもんでないと分か
らないもん」といって奏でていました。その勇姿は「自分が胡弓の良さに気づいて
皆さんに感動を与えることに喜びを感じてい ます」とでもいいたげであり、確かに
感動そのものでありました。

  次の例ですが、卒業制作で譜面台を作った本学学生がいました。何の変哲も
ないようにみえ る譜面台でしたが、彼がその側に立つと、譜面台が踊るように感
じられました。本人は楽器演奏のときに譜面台のお世話になっていたからこそ、
作品についてひ とつひとつの工夫があったのでしょう。それが不思議なことに実
感として見る方に伝わってきました。

  このように、彼らは、皆さんに感動いただくために 自分自身が満足と喜びの境
地にあるので す。自己満足ではありません。他者の喜びとともにある「自分満足
」なのです。これがあって初めて自分流の良さが出てくるのです。私は、「皆さん、
とにかく とことんやりなさい。理屈のコミユニケーションは結構難しいけれども、情
熱ならばかならず伝わります。」といって発破をかけています。作品を造って終わ
り にするのではなく、良さはまず自分から喜びに変えて、そして皆さんの心に響か
せましょう。


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