学園便り2002.6**************************

「“建築”、教育の日頃をつれづれに」(父母会5/18にてスピーチ)                               富樫豊 

 学生とのコミュニケーションに より学生と教師との間で教育という「もの
づくりと人づくり」に励んでおります。少し教育理念的なお話を紹介します。

 若者の進学の動機は様々であり ます。建築の場合には、絵が好きならデザ
イン系へ、コンピュータが好きなら情報系へといったことはなく、建築って
何となくいいなあと思って入って来る人がほとんどです。資格は欲しいとか
言っても、その先には建築に寄せる期待があります。ただ建築というものが
あまりにも漠然としたものであるだけに、単純明快な動機づけがしにくいと
いったところです。

  では「建築とは」と考えてみますと、建築なくしてそう我が家なくして生活
が成り立ちません。建築は空気みたいなもので重要性を自覚しないものです。
ですか ら、いざ建築はと聞かれたらあまり答えられないのが正直なところ
であり、そういうものなのであります。これだからこそ逆に、建築に対して
皆さんはいろいろ な想いを自由に持つこともできます。「建築イコール我が家」
であってもいいのです。当然入学してくる学生においてもです。学生が「木造
住宅が好きでそうし た関連の企業に就職したい」から、木造だけ勉強し他は勉
強したくないといって、ターゲットを絞ってもきます。こういう場合、「いや
そうではなく建築は生活 空間を造るもの」、「建築をたまたま木材でつくって
も中身である生活空間が大事」と説いており、彼らのエネルギーが萎まないよ
う大きく増産するように努め ております。

 実は、彼らの想いや問いかけは 本質 をついているのです。我ら教師側も彼
らの熱い問いかけに応じることにより、彼らと我らとで建築を担っていくの
です。父母の皆さんも経験があることでしょ う。小さな子供が「お母さん
、水はどうして水蒸気になるの」と聞いてきたりして、彼らなりの問いかけ
に大人はたじたじだったでしょう。そうです、今度は舞 台を変えて、彼らは
プロの卵として熱い問いかけをしてきます。「そんなことわからないのか」で
は決してありません。こうした問いかけの連続が学び手と教え 手との間の知
的コミュニケーションを形成し、明日の建築といわず明日の人を育くみます。
かくいう私もすらすらと講義をしておりますが、これは決して私自身 がオリ
ジナルで考えて構成したわけではなく、私とこれまでたくさんの学生とのコ
ミュニケーションで造り上げたものを後進の学生に託すために私が演じ、ま
た あらたなものを造り上げているのです。

 父母の皆さん、彼らのそうした 想いをご理解いただき陰ながらで結構です
ので応援いただければ幸いに存じます。


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