学園便り2001.7(1999.7 と同じ文)********************
「たっぷり時間をかけて情念の蓄積を!〜夏休みを有意義に過しま しょう〜」
                                                                                                富樫豊

  これから皆さんは夏休みに入ります。高温多湿な日本の夏を効果的に過ごす為
の夏休みですが、小・中・高の時代には夏休みの盛り沢山な宿題に苦しみ悩まさ
れた人も多かったことでしょう。では専門学校はというと、(二年生の方は承知でし
ょうが)夏休みの課題をだされる教師もいらっしゃることでしょうが、大方は宿題と
いったものはあまりなく、人から言われる事なく皆さん自身で有意義に行動するこ
とが当然要求されております。私は、「夏休みにはまとまった時間を自由に使うこ
とが出来る」のだから、旅行や自由な研究やボランテイアでもなんでも積極的に行
動すべしとよく言っております。今の時代には三度の飯よりも作品造りが好きとか
暇だから作品を造ろうといった雰囲気はなく、そうした雰囲気も自ら造る時代にな
ったといってもいいでしょう。ですから、「ものづくり」の気迫というか情熱というかそ
ういったものを養うには自ら積極的に行動しなければなりません。

 ちょっと先人達の例をみましょう。イサムノグチという著名な彫刻家がおられまし
た。彼は年老いても創作が衰えることを知りませんでした。ある人が彼に次のよう
に聞きました。「なぜ若々しいみずみずしい感覚でしかも創作意欲が衰えないのか」
と。彼は答えました。「若い時代に考えていたことを今の年までずーと作品にしてき
ているだけです」と。そうです、皆さん。イサムノグチは若いときに多くの体験を積み
重ね、自分のバックボーンを構築して下さいといっているように思えます。また、アイ
ンシュタインもしかり。時計と物差しが一緒に見えたという子どもの時の遊びを通して
信念や哲学めいたものを培ってきた経験が後年になって相対性理論として花開いた
のです。

 皆さんには、世界的発見や世界的創作を目指して頑張って欲しいのは正直な
ところですが今そういったことを主張したいのではなく、皆さん自身の道を勢力的に
歩むための羅針盤がこうしたたっぷりと余りある時間と空間で造り上げられている
ことを知っていただきたいのです。もちろんこうした余裕が次への飛躍を生みます。
ただし、余裕を有意義にするのも皆さんの心意気一つです。大きな視野で見通しを
持って、歩みを小さくてもいいから着実に一歩ずつ。そうした時期が夏休みですの
で、健闘を。

 
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